近代日本において、もっとも苛烈な熱意をもってロシア文学に向き合ったひとりが、
井筒俊彦であったことを私たちはもう一度思い出そう。
「露西亜文学」は『ロシア的人間』の前駆であり、1948年に書かれた「ロシアの内面的生活」は、
ロシア文学論としてだけでなく、翌年、『神秘哲学』を書く井筒俊彦の精神史を考えるにおいても
看過できない。
哲学を生きるとはいかなることかをロシア文学に「見た」という作者の言葉を
そのままに受け取る準備をしさえすれば、一切のロシア文学に関する予備知識のない人間も
この本に退屈することはないだろう。読み終わったときには、ある昂りを覚えるに違いない。
ここにあるのは、詩を宿した哲学であり、哲学の精神を携えた批評である。