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霊園から見た近代日本
 
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霊園から見た近代日本 [単行本(ソフトカバー)]

浦辺 登
5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

幕末から明治をへて昭和初期までのいわゆる近代史の中で頭山満を中心とした《玄洋社》の果たした役割がいかに重要だったのかを正面からとりあげた歴史書は少ない。本書は近代という日本の国家形成期に活躍した人物たちを、青山霊園、谷中霊園、泉岳寺、木母寺、築地本願寺など墓石に刻まれた人脈を《玄洋社》をキーワードとして読み解くことで再検証したものである。

著者について

昭和31年福岡県生まれ。福岡大学ドイツ語学科在学中から雑誌への投稿を行う。オンライン書店bk1では「書評の鉄人」の称号を得る。著書に『太宰府天満宮の定遠館』(弦書房)

登録情報

  • 単行本(ソフトカバー): 240ページ
  • 出版社: 弦書房 (2011/3/10)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 486329056X
  • ISBN-13: 978-4863290563
  • 発売日: 2011/3/10
  • 商品の寸法: 19 x 13 x 2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By でび
筆者の名前も知らなかったけど,この出版社の名前も聞いたことがなかった。
奥付見ると福岡の出版社みたいで,渡辺京二(『黒船前夜』だけ読んだことがある)の本なんかも出してる。
こういう地方の出版社が個性的な本を出すのはいいことだと思う。
健闘を祈る。

この本はなかなかおもしろい。
青山霊園に眠る人たちが近代史に果たした役割を改めて考えるって体裁の本なのだけれど,へぇーて思う小ネタがたくさん。

たとえばいくつか例を挙げるとこんな感じ。
・暗殺された大久保利通の墓が,青山霊園にあるのだが,その時災難に巻き込まれて亡くなった御者と馬(!)の墓も同じ場所にある。
・西南戦争の戦闘のきっかけは,大久保が放った密偵が「鹿児島入りの目的は視察」と言ったのを,「(西郷の)刺殺」と聞き違えたから。
・佐賀の乱に敗れた江藤新平は逃亡したが,自分が司法卿時代に整備した手配写真制度のために容易に捕まった,
・処刑された江藤新平は,明治には珍しい「さらし首」にされた。「さらし首」の刑がなくなったのは,明治11年。
・「高島暦」の祖である明治の易者高島嘉右衛門を清の李鴻章(日清戦争の清国全権)は「易は支那に起こりて支那に滅び而して今,翁(高島)に因て日本に起こる」高く評価していた。

などなど,おもしろいエピソードてんこ盛なのだが,読み進めるうちに疑念もわいてくる。

この本て,巻末に挙げられてる参考文献からエピソードを拾ってきて再構成しただけじゃないのか?
たぶん100冊ぐらい挙げられている参考文献の中で,宮沢賢治や石川啄木の作品を除けば,自分が読んだことがあるのは中島岳志の『中村屋のボース』だけ。
(この本は,新宿中村屋のカレーの生みの親である,ラビ・ビハリ・ボースの話で,おもしろかった。)

もちろん,これだけの本を書くのは大変には違いないし,こういう本があってもいいと思うし,広く読まれていい本だとは思うが,自分はこういう本を読みたい訳ではない。

自分が読みたいのは,『会津という神話』(田中悟)のような,「う〜む」とうなるような本で,「へぇ〜」って感心するぐらいのペラい本だ。

浦辺がこの本を書いた動機というのが,「玄洋社とはなんだったかを知りたいと思ったから」だということだが,話があっちこっちに飛びまくってて,その目的が達せられたとは言えない。

単なる右翼の結社ではなく,アジアへの広がりがあったってのは分かったけど,まだまだ足りない。

あとがきに,「今後は,近代化の流れの中で行動した玄洋社と,無名であうことを誇りに思って書き残すことをしなかった玄洋社の人々を掘り返してみたい考えています。」とある。
その本を期待しようと思う。
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By 左党犬 トップ500レビュアー
 「近代日本の裏面史」である。日本史の教科書にでてくる有名人も数多く登場するが、お墓を媒介にして見えないところでつながっている人脈をたぐりよせると、日本史の教科書にはでてこない世界が浮かび上がってくる。

 幕末に「開国」を迫られ、欧米中心で弱肉強食の厳しい国際社会のまっただなかに放り込まれた小国・日本。「近代日本」とは、日本と日本人が生き残りをかけた生存競争の時代であった。その状況のもと、日本人の潜在能力が解き離たれ、さまざまな分野で爆発した時代でもあった。

 本書は、著者が東京に散在する霊園をたずねて、死者たちと交わした対話記録といってもいい本である。墓が墓を呼び、イモヅルをたぐりよせるようにして現れてきたのは「見えないネットワークでつながっている人脈」であった。

 その中心にあって、本書の通奏低音として流れているのは、福岡に源流を持つ政治結社「玄洋社」に連なる人びとである。そしてその背後にあった名も無き日本人たちだ。東京にいくよりも朝鮮半島のほうが近い、東京までの距離と上海までの距離はほぼ同じという地理的条件をもった国際都市・福岡。福岡出身の著者が、福岡の出版社から出したこの本は、福岡出身者でなければ書けない内容だといっていいかもしれない。関心のありかたが、福岡出身者以外とはやや違いがあることを感じさせるからだ。

 幕末から明治維新にかけての動乱期、当時の藩主・黒田長溥(くろだ・ながひろ)の致命的な情勢判断ミスによる意志決定のため、本来は倒幕派であったのにかかわらず、佐幕派とみなされて維新後の社会において苦杯を飲まされることになった福岡藩。明治維新の敗者となった「負け組」は、会津藩や越後長岡藩といった東北だけではなかったのである。
 その環境のなかからでてきたのが「玄洋社」であった。いまだに右翼団体というレッテルを貼られたままの玄洋社だが、最初の頃は自由民権運動の担い手の一つだったことに、少なからぬ読者は驚くのではないだろうか。この玄洋社が民権から国権に比重を移していたのもまた「近代日本」である。

 面白いことに本書には、ただの一枚も肖像写真は掲載されていない。出てくるのはひたすら墓、墓、墓... 著者みずからが撮影した墓石と墓碑銘の写真ばかりである。東京はある意味では、近代日本のオモテだけでなく、ウラの歴史もあわせた巨大な霊園地帯なのかもしれないという気さえしてくる。霊園で死者たちの声を聴き取った著者は、さながら霊媒のような存在だといったら著者からは叱られるだろうか。むしろ、タイトルは『霊園で聴いた近代日本』とするべきだったかもしれない。

 すでに中途半端なままに終わってしまった「近代日本」とは何であったのか、本来どういう方向にむかう可能性があったのか。このことを考えることは意味のあることだろう。だから「近代日本の裏面史」である本書は、オルタナティブな可能性をもっていた「近代日本史」でもあるのだ。

 本書には珍しく「主要人名索引」が完備しているので、索引から人名をたぐりよせてみる読み方も面白いかもしれない。ぜひ一読を薦めたい。

    
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