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戦後一般家庭内にも普及してきた電話は、いつのまにか「おしゃべり」という行為そのものが自己目的化し、家庭用の電話の通話度数が激増した。通信事業者が本来想定していた電話の使いかた以外に、消費者自らが使い方を「再発明」するということに通信事業者がやっと気がづき始めたのは、おそらく1970年代に電電公社が「奥様モニター」制度を発足したころである。その後、ポケベルやPHS、携帯電話の市場開拓の主な対象が、ビジネスマンから若年女性にシフトしてきたのも、女性によるメディアの「再発明」の証左であろう。
本書では、北アメリカにおける、消費者による電話の「再発明」を、とくに自動車との比較により明らかにしている。また、北米の農村における電話組合の発達が、その後のATT(ベル)グループによる電話網寡占の揺籃となっていたことを指摘しており、農村でのおしゃべり通話の習慣が、その後の都市部の生活スタイルに大きく影響しているという。また、農村電話はヨーロッパにはない北米独特のものであると指摘しているが、日本の読者は日本の「農事有線放送電話」との類似を見て取ることができるだろう。
メディア史、あるいは技術史といった観点から高く評価(Dexter賞)されている本書であるが、社会学、とくに情報分野の研究者には一読をおすすめしたい。
訳者の吉見は、日本におけるカルチュラルスタディーズの先駆者であり、『「声」の資本主義』『メディアとしての電話』(共著)などコミュニケーション技術の社会史に関する著作も多い。共訳の松田も、『ポケベル・ケータイ主義!』(共著)などメディアとジェンダーに関する独創的な著作を著している。「訳者あとがき」や巻末の「補遺」「注」「参考文献」だけでも相当な情報量がある。
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