いまさら「面白いですYO」なんて言わなくても、この本に熱い支持が集まっていることは、知ってる人はみんな知ってるでしょう。
議論の雑な点などについて細かいことを言い出せば切りがないけれど、それはヤボというもの。著者の言う「恋愛資本主義」には的を外さず、キッチリ一矢報いている。「負け犬」をめぐるあれやこれやの侃々諤々、「電車男」をめぐる喧々囂々の中で、これほどスッキリした論陣を張っているものを初めて目にした。
1つの価値観に対する違和感を意味ある言葉で表明するためには、その価値観の外に別の足場を仮構しなくてはならない。その足場のリアリティを、自分でどこまで信じられるか、著者の言葉を借りれば妄想力が試されるわけだ。この点、本書の発する強烈なデムパは、「萌え」の感受性に恵まれない私をも直撃した。参った。
庵野秀明を裏切り者として断罪し、サブカルを日和見主義と規定して「萌え」の勝利を宣言するくだり(p389)などは、「エヴァ」事件で傷ついた多くの衆生を救済するのではないか。
ただ、「あとがき」があまりに衝撃的で、一歩間違うと本書の議論全体が著者の個人史と関連づけて消費されはしないかと、気がかりだ。このカミングアウトが、著者の今後の活動を制限することにならなければ良いが…
私自身は著者と行動を共にする決断をつけかねている(また才能にも欠けていると自覚している)ので、第三者の慎みとして★4つにとどめたい。