「し、しかし・・・けれども・・・これこそが報道じゃないのか!?
まるで心地よくない話、できれば聞かないですませたい現実!!」
先行してレビューされたおふた方のおっしゃるように「電波の城」10巻は物語のターニングポイントに違いありません。漫画は読ませるもの。本作の持つ引力は尋常ではありません。
いくつかの思惑が重なりあって、それは大みそか格闘技特番「ソルジャー・コロッセオ」の番宣として仕込まれたコーナーであった筈なのに、雨宮詩織がついに堅城である本城律子に一撃を加えるという104話「男はつらいよ」という何とも人を食ったタイトルの回。詩織を知る者たちにとって「色もの」の仕事と思っていたアテナガールというルートを経て辿り着いたという下りがまことに見事。なぜなら海竜山という切り札を手にできたのは雨宮詩織という世の中の暗い淵を覗いてきた女にとって、まさに置かれた境遇の中で見出した活路であったからだ。
本城の兄征彦はエマルジョン燃料の特番を妨害し、妹の鼻をへし折り高らかにジャーナリストは継続も歴史観もない瓦版屋だと嘲笑する。ここが作者の白眉だと思う。体制に不都合な真実、そして本当は聞きたくない真実。その、征彦や律子らにも思いもよらない一撃を「真実」を電波の城からまき散らす雨宮詩織。
谷口ハジメにとって密かに想いを寄せているひとが、将来どんな暗い淵に住む住人であるのかを今巻では高らかになる鐘の音のように告げている。
この作品を読まずして、マンガ読みたるべからず。大絶賛でご紹介する作品です。海竜山の娘さやかに接する詩織も、仁科といる詩織も同じ「雨宮詩織」。そして触れ得ざるもうひとつの顔。大波乱の予兆を秘めつつ物語は続く。彼女は阿修羅なのか?
「これは・・・・・お譲の毒だ。海竜山の口を借りて、電波に乗せて・・・・・。日本中に」