本書は、近年の「電子決済ビジネス」の全容と、銀行以外の事業体が資金決済市場へ参入する可能性について、
資金決済に係る法制度の変遷を踏まえながら解説した良書である。消費者の日常生活をイメージしながら専門
的知見を落としこんでいく解説方法は、読み手に負担を与えない実にニクイまとめ方だ。
現在、携帯電話各社の通話・通信サービスは消費者の日常ツールとなっている。ひと昔前まで、有線での通話・
通信事業を独占していたNTTは、その社会的使命のあり方、位置づけが問われるようになってしまった。かつて
孫正義は「NTT買収もあり得る」とコメントし物議をかもしたことがあったが、通信市場の勢力図を塗り替えかねな
いこのドタバタ劇は、対銀行にも起こりえるのだろうか。通信事業者が現在のメガバンクを買収し、情報ネット
ワークの一部とし、自社の資金決済機能を強化することも考えられる。資金決済市場へ参入を試みる企業は、本
書で慎重に扱われている「責任分解点」など、クリアしなければならない重要な課題は多いだろう。しかし、ポイ
ントプログラムと電子決済をうまく組み合わせ、また「消費者にとって利用しやすい」C t o Cの通信ネットワーク
を構築した企業は、今後、経済システムのビッグプレイヤーになることが予見される。本書は、近未来の産業政策
のあり方さえも考えさせる重要な書籍となるだろう。