全編を通して著者は一切感情的にならず、豊富な具体例を示し電子書籍の現状を冷静に示している。
その中で唯一「事業仕分け」により、何も理解していない者たちが電子書籍に関する予算を左右する事への「怒り」が、著者の電子書籍に関する真剣さを裏付けていると言えると思う。
内容としては、米国でのiPad vs.キンドルと、昨年末に日本国内で登場したシャープのGALAPAGOS vs. ソニーリーダーの対比からの始まりで、順を追って日本の出版事業の実情から電子書籍がどのように生まれていくかが推し量られ、おもしろく読み進めていく事ができた。
電子書籍の端末は、フォーマットの違いは問題ではなく、プラットフォームのあり方が重要な点もわかりやすく理解できた。
日本の出版事業のあり方として、弊害もあるようだがどんな小さな出版社の本も対等に本屋に並ぶ事ができる点は共感できる。日米の出版事業の比較もおもしろい。
ただ、素人としては読解に高度と思える専門的な考え方も部分的に見られ、逆に玄人の方はより実用的に読めると思った。
一時期話題になった「電子書籍なら印税7割」は、紙の出版の概念を、仕組みが全く異なる電子書籍に当てはめて考える事がいかに間違いであるかが、豊富な具体例でよくわかった。
とある業界人の「電子書籍は黒船ではなく鉄砲伝来。武器なら使えばいい」という言葉が、現在の日本の電子書籍の状況を的確に表現していると感じた。