前作で松本清張賞受賞、直木賞最終選考に残っただけあって、氏の筆力はお墨付きだ。
長編でも全くだれることなくたっぷり堪能させてくれる。
尚、前々作、前作と三部作を通じて、信長の周辺で歴史がダイナミックに動くさまを、
彼に仕える専門職の目から描くというのは共通しているが、
専門職の主人公は鷹、築城、鉄砲と、次第に権力の周囲から中枢へとシフトしてきている。
また、叙事に寄っていた内容が、人情描写力向上とともに叙情の割合が増してきている。
さらに前作で極めた圧倒意的な考証・薀蓄で読ませるやり方が今回は抑え気味。
総じて、オーソドックスな時代物へと移行してきている感じだ。
今後、氏のセールスポイントであったものが薄れていくとすれば勿体無い。
ぜひともオリジナリティーを保ったままで、スケールアップした作品を期待したいものだ。