「夜市」、「風の古道」に続く、私たちの住む空間から少しずれた空間(私たちからは決して見えない)に暮らす人々の物語。著者の描く空間は、もちろん創作上のものだが、実は今でも日本のどこかにあるのではないか、とそんな気にさせてくれ、気がつけば著者の描く世界の住人の一人になっている自分を発見する。
今回も、穏、雷季、風わいわい、墓町、闇番、鬼衆、と魅力的な設定、登場人物により飽きさせない。プロットも主人公の物語に、姉の失踪の話、鬼衆の話が、時間、空間をこえて進み、前二作より複雑な構造になっている。主人公が「穏」を出るまでの前半は、「夜市」にもあった幻想的な妖しさをもつ、イメージの世界を十分堪能できる。しかし、主人公が「風わいわい」と一緒に「穏」から逃走する後半は、現代社会が投影されすぎている感じがして、前二作ほど「異空間で遊ぶ」ことはできなかった。
ただ、次作も是非読んでみたいと思わせる作品にはかわりはない。