「雲のむこう、約束の場所」はまさに、小説化されることをずっと、待ち続けていたかのようだ。
この小説は、原作の追補用として描かれたものだろうが、世に出ている多くのそれらとは、明らかに完成度が違う。レベルが高い。
それほど、文章化することで作品本来の良さを引き出しているのだ。これほど心が震わせて読んだ作品は、久しい。
それでも、両手を挙げて、賛同、感動、というつもりはない。
良かった点、残念な点をそれぞれ考えてみた。
良い点として、小説全体を三十一才のヒロキが「あの頃」、そして「約束を果たしに向かう三年後」のことを思い出し、書きつづっているというコンセプトで描かれている点だ。
映画でのいわゆる「神」の視点ではなく、ヒロキ自身の「僕」の視点で描いたことで、作品が「しっくり」きているのだ。
ヒロキ自身〜夢の中のさゆり〜タクヤの日記 がテンポよく入れ替わり展開していく「眠りの章」は圧巻。
また、水野理佳という新しい登場人物を出すことで、ヒロキの葛藤をよりわかりやすく、より深いものにしている。
残念だった点は、前半部での「塔」の描写が目立っていなかったことだ。なぜ塔にヒロキ達は惹かれるのか?その課程と、塔自体の存在感が前半あまり感じられなかった。
また、序章と夏の章の前半で、誰が観ているのか分からない、不安定な視点があった。(後半は改善されている)
私は原作の映画には、かぎりなく5に近い星4つをつけた。
この小説は、悪い点がない訳じゃないが、それでも星5つをあげた。
オリジナルを上回っているというのではない。小説化されたことで私はやっと、この「雲のむこう、約束の場所」が、どこに収めるべき作品なのか、を理解することができたと思うからだ。
まず、映画を見て欲しい。しかしこの小説も原作と同じくらい、読んで欲しいと思う。