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昭和10年代の北海道。大学のじんじん冷える実験室の中で、中谷宇吉郎は根気づよく雪の結晶の研究をしつづけた。この本では雪の結晶の分類がメインになっている。よく雪の結晶というとあの六角形(正規六花型というのだそう)を思い浮かべるけれど、湿度などの条件によって、十二角形型になったり畸形になったりと、ほんとうにさまざまな形になるものだ。巻頭に結晶の写真がたくさん出ていて、本編の解説と行ったり来たりしながら結晶の種類を知っていく。
本の後半では、装置を使って人工的に雪の結晶をつくる実験を紹介している。どんな環境だとどんな形の結晶になるかがこと細かに解説されている。
雪の結晶の話などは、ふつうの人にとっては生活に必要ない些細な話にすぎないかもしれない。にもかかわらず、この本は読み終わった後に、読んでよかったなと思わせる。とてもよい気分になるのは、中谷の雪に対する愛情が本全体を包み込んでいるからだろう。内容は雪の結晶の話だけれども、同時に中谷の雪に対する情熱ぶりを読んでいる気持ちになった。
初版が出たのは戦前の昭和10年代。いま読んでもとてもわかりやすい文だ。これもやっぱり中谷の一般の人に雪のことを知らせるという欲求とも使命感ともいえるものがあるからなんだろう。
その後、中谷の雪の研究の功績が、いまにどうつながっているのかが解説でフォローされているのもよい。
とくに読むシチュエーションを気にされる方は、雪国に旅するときのお供として読むことをおすすめします。
このように西堀氏に南極での雪の顕微鏡写真を撮らせる契機になったのは、南極越冬中に昭和基地で読んだ中谷氏の「雪の研究」の本だったそうです。実際、この中谷氏の雪氷に関する研究の本を読むと、必要な設備がないから最先端の研究出来ない、なんてことは言えなくなります。(それは西堀氏の「南極越冬記」でも示唆されていることですが) 科学の対象に古いも新しいもなく、【科学する心で自然現象に接すること】こそが肝要なのだと教えられます。
「風土に合った研究を」と中谷氏は述べられていたそうです。中谷氏が雪の研究に取組んだのも、実は以前から続けていた研究テーマが当時の北海道で続けるのが困難だったため、「慰み半分で始めた」テーマだったそうです。しかし、世間の流行を追い掛けるだけが科学研究ではない、ということを氏の自然現象に接する姿を通じて教えてくれます。試行錯誤を繰返しながら、如何に楽しく/しぶとく研究をやるのか、教えられます。雪という冷たい対象の話なのに、読了後にホノボノとした気分にさせられる好著です。
もし中谷氏に関して興味を持たれたら、他の著作を併せて読んでみることをお薦めします。(「科学の方法」や「中谷宇吉郎随筆集」) 随筆集の中で出てくる、霜柱の研究に関するエピソードは「科学する心とは何か?」の本質を鋭く突いています。
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