主人公である佐久間公シリーズは順に読み進めた。
著者と主人公は思想の面でオーバーラップしているようなのだが、
初期の著作である失踪人調査人としての「追跡者の血統」までは、主人公自身が僕と称し、
若く軽い(軟派の意にあらず)エンターテイメントであり、決してハードボイルドではない。
ハードボイルドではなく、若い主人公がドラマチックに活躍する探偵のマネゴト物語として
読むぶんには楽しめるシリーズであったと思う。
年月を経って復活したこの「雪蛍」は、主人公も中年になり、口調も「僕」が「私」に変わ
ったことは他レビューに示される通りであるが、当然、主人公(も著者)も中年になった割に
歳相応に人生経験からの重い台詞や口調かというと、さにあらず、弁論大会かと思わせるほ
どの多弁・論述のオンパレードで、辟易せざるを得ない。押し付けがましいほどの「探偵業は
生き方だ」も、あらゆる人物に論弁することではない。
所属する組織が変化したことで、ストーリーは雪(失踪人調査)と蛍(薬物依存)の2つの
構成が同時進行であるが、結果としてホタルは薬物依存ではないと私は思うし、失踪の方も
失踪ではなく、内容的にもどうでもいい話。取り巻く登場人物も極めて中途半端。
新佐久間公Srのための、ご都合主義的駄作です。
男は黙って(多弁にならず)自身の主義を貫くというのが私の中のハードボイルド像です。
暴力と怪我の苦痛に耐えて、という上っ面の安っぽい内容はいただけない。