昭和43年生まれの方に、算術という視点を通じて日本のすばらしさを見せて
いただいた。日本人の良さを感覚的に信じていても、それを言葉や、ましてや
数式で表現できないもどかしさに非力を悟る中高年オジンとしては、出会えて
良かったと心から思える本である。
副題に「日本の美と心に潜む正方形と√2の秘密」あるとおり、数式や数論
的な展開は当然の如くに登場する。筆者の説明をそれなりに噛みしめたければ
有理数・無理数の別や2階の漸化式の解法、数列の極限値、指数・対数関数の
形状、変数分離型の線型微分方程式、テイラー級数などの高校数学〜大学教養
課程の数学は必要になるが、それがわからないからといって読者を門前払いす
るような筆者ではない。数式を味わえない読者にも美しさを感じ取れるよう
言葉を尽くした説明を用意している。心配無用である。
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なお、数式やグラフの説明を丁寧にすることで、本文に対する読者の注意が
散漫になることを懼れてのことだと思うが、115、181ページと125、180ページの
底の場合分けによる関数形状の違いなどにあえて言及しない記述は、未習読者に
プレッシャーを与えまいとする配慮ゆえのこととはいえ、本書を手にする読者が
高卒以上の方々が中心になる実態からすれば、場合わけは明記しておくほうが
親切であったと考える。
また、75ページの線分黄金比分割の式の展開は誤りであろう(出版社のHPに
も今のところ誤植情報としての掲載はないが)。
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あれこれケチをつけてしまったが、本書を手に取る価値は少々の誤植程度では
微塵も減りはしないものである。
とにかく志の高い本である。自分よりずっと若い方に肩を叩いて励ましていた
だいたようで、読後の気持ちがとても暖かかった。