雪崩というと、アカデミックな学問の方向に流れるか、
「総合的な感覚が大事」といった体感論にとかくなりがちであるが、
この本では「現場プロが実践」という、地に足がついた具体的内容が展開されている。
まず、雪崩の危険がある「地形」についての詳細な記述は秀逸である。
「地形」を理解し行動することが、雪崩のリスクを低減する為にいかに重要であるかを
繰り返し丁寧に説き、更にフィールドでのリスクマネジメントへと発展させている点が
素晴らしい。
また、斜面の雪は雪崩を起こしうるのか? という我々最大の関心事に対して、
「積雪の不安定性評価」という言葉を提示し、その概念と目的、使用するデータ、
そして実際の例が書かれており、抽象的になりがちな雪の安定性について
分かりやすい記述がなされている。
ただし、レスキューに関しては、掘り出しで終わっており、その後の搬送等については、
別書籍等が必要であろう。
バランスの取れた構成と明快な文章、そして原則的な事項を大切にした記述の確かさは、
両著者が所属する日本雪崩ネットワークのこれまでの活動内容と実績を考えれば
うなずけるところである。
他団体においても、この本を採用することによってより充実した雪崩講習会の開催と
実践に即した理解を深めることができるだろう。
他の雪崩本や雑誌で見かける記事と比べ、それらとの質の違いは歴然である。
餅は餅屋といったところか。
どれが本物か?見抜けるか否か、ユーザーの側も問われていると言える。
手元に置いておいて損はない一冊。