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雪の練習生
 
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雪の練習生 [単行本]

多和田 葉子
5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

商品の説明

第64回(2011年) 野間文芸賞受賞

内容(「BOOK」データベースより)

サーカスの花形から作家に転身し、自伝を書く「わたし」。その娘で、女曲芸師と伝説の「死の接吻」を演じた「トスカ」。さらに、ベルリン動物園で飼育係の愛情に育まれ、世界的アイドルとなった孫息子の「クヌート」。人と動物との境を自在に行き来しつつ語られる、美しい逞しいホッキョクグマ三代の物語。

登録情報

  • 単行本: 253ページ
  • 出版社: 新潮社 (2011/01)
  • ISBN-10: 4104361046
  • ISBN-13: 978-4104361045
  • 発売日: 2011/01
  • 商品の寸法: 19.6 x 13.6 x 2.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 205,413位 (本のベストセラーを見る)
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12 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By biscuit
クマ、なのである。
語り手がホッキョクグマなのだ。
読み始めて、まずおどろいたのはそのことだった。
それも、ただのクマじゃない。
第一章「祖母の進化論」の「わたし」は人間の言葉を話し、連日会議に出席しながら、かつてサーカスの舞台に立った経験を自伝にしたためている。
では単純に、擬人化された動物の物語なのかと思っていると、そういうわけではないらしい。

第二章「死の接吻」は、女曲芸師ウルズラ(人間)の視点で語りはじめられる。
ある日、ウルズラのサーカスに、第一章の主人公「わたし」の娘であるホッキョクグマ「トスカ」がやってくる。
新しい演目の練習を重ねるうち、ウルズラとトスカの間に、ふたりだけの奇妙でやすらかな時間が訪れる。

第三章「北極を想う日」の語り手は、トスカの息子「クヌート」である。
母親が育児放棄したため、動物園の飼育係によって育てられたという設定は、実在し、世界中でニュースになった同じ名前のホッキョクグマと同じだ。
クヌートの成長と共に、しだいに曖昧になっていくクマと人間の境界線をたどりながら、ふと考え込んでしまう。

言葉とは、書くとは何か。
種族とは、ルーツとは。
背表紙を閉じた後も、雪のように真っ白な毛皮の残像と共に、そんな疑問が頭のなかをぐるぐる回ってはなれない。

と言って、けしてかたくるしい文章ではなく、数ページに一度はくすりと笑いたくなるような、楽しい文体で書かれているのが多和田葉子の魅力。
ああ、もう読んじゃった。また読みたいなあという読書の幸せをたっぷり味わえる小説。
このレビューは参考になりましたか?
5 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
私もそうでしたが、ベルリン動物園の大スターだった北極熊クヌートに夢中になった人は多いと思います。なんであんなに可愛いのか、その裏に隠された秘密を多和田さんがシュールに解き明かしてくれています。
このレビューは参考になりましたか?
2 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
クマの系譜 2011/7/11
By ヤマボー トップ500レビュアー
かわいらしい映像で世界中を笑顔にしたベルリン動物園の小熊、クヌート。本書はクヌートのおばあさんにあたるホッキョクグマが自伝を書き始めるところから始まる。ロシアのサーカス団の花形スターだった彼女はケガをきっかけにサーカスを引退し、自伝を書くことに・・。サーカスのクマの自伝はベストセラーになる。言語を自由に操る彼女は「未来の自伝」を書くことを決める。自分の人生はあらかじめ書いた自伝通りになると信じて。

第二章では自伝に描かれた娘トスカの物語だ。しかし語るのはトスカではなくサーカス団の女性調教師ウルズラである。ウルズラが自らの半生を回顧する文章が、いつの間にかトスカの物語と重なっていく。サーカス団を舞台にしてウルズラとトスカの人生が交わり、やがて境界があいまいになっていき、「死の接吻」という有名な出し物として結実する。

最後に登場するのがクヌートだ。トスカの育児放棄にあい、人間に育てられることになったクヌートは育ての親である人間を慕う。ストップ地球温暖化の象徴となったクヌートが動物園の内側から見る世界は不思議に満ちている。自分がどうふるまえば観客が喜ぶか、クヌートはよく知っているし、研究もする。祖母と母の遺伝子を確かに受け継いでいるのだ。

なんと言っても描写が素晴らしい。急いで読み進めることなく一文ずつをじっくりと味わって欲しい。美しい形容詞、クスリと笑ってしまう楽しい表現を存分に楽しめる。クマたちの語る言葉に耳を傾け、丁寧に読んでいくうちに、美しい白い毛皮を持つ大きな(しかし心優しい)ホッキョクグマたちが眼前に現れ、彼らを通して極北の空気を感じられるはずだ。

追記 クヌートは今年の3月に急死してしまった。とても残念だ。
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