初めて読んだ作家さんなので、他の小説と比較は出来ませんが、非常に気に入りました。
あらすじを分解して構造主義的に言ってしまえば「ありきたりなストーリー」なのでしょうが、この小説の醍醐味は話の筋ではありません。
おおまかなストーリーとしては、雪の降る公園で人の目に見えないはずの少女と出会った高校生の主人公が、大学に入り、就職し、挫折し、帰郷してまた少女に出会って・・・というファンタジー。
一応ハッピーエンドになります。
哲学が好きな人にはウケがいいでしょうが、ストーリー重視の人には面白くないのではないかと思います。
「しつこい、まどろっこしい、うじうじしてる」という方もいるでしょう。
あとは「映画はアクション映画しか観ません」という人はやめた方がいいです。
実に淡々と、静かに語られますので、そこで感想がまっぷたつに割れそうです。
哲学で言うと、プラトンとアリストテレスとヘーゲルを足して、そこにキルケゴールの絶望とハイデガーの実存を隠し味に数理哲学もプラスしたような話です(多分)。
題名「雪の夜話」は、この文章全体を実に如実に表しているように感じます。
文章そのものが、静かな雪の夜です。
解説にも書いてありましたが、本当に「地味」です。
そして、その中にとても濃縮された強さがあります。
自分は読み始めてしばらく、福永武彦みたいだと思いました。
が、福永武彦よりはむしろ力強く、地に足がついているというか現実的、おそらくこの本のテーマである「存在」「時間」「自我」を非常に堅実に描いていると思います。
陳腐に言えば「命の賛歌」と言えなくもありませんが、やはり違います。
「自分が自分であること」「いつから自分になったのか」「自分は自分にしかなれないのか」
そういった自我への問いかけが実に透明感のある美しい文章で、そしてまた秘めた力強さをもって描かれています。