31年――何の年月かによってそれが長いのか短いのかは変わろうが、それが「獄中にいた期間」となると、「長い」ということになるだろう。しかもその人物は政府の思想に従わないという理由で拘束され、服役期間を度々延長され、釈放されたかと思うとまた拘束されてきた"良心の囚人"だった。それを考えると余りに長すぎると言わざるを得ない。
1959年、政治犯として獄中に繋がれた彼は、侵略国当局の執拗な拷問を受け、"思想改造"を迫られる。チベット人がチベット人を虐げるという悲劇さえ繰り返された。
同書には彼のみならず、その他チベット人の"良心の囚人"の悲劇が幾つも記されている。
しかし、彼の思想は決して"改造"させられることはなかった。
「人間の肉体ははかりしれないほどの苦痛にも耐えることができ、しかも回復する。傷は癒える。だが、精神が挫けてしまったら、すべては壊れてしまうのだ」
鋼のような強靭な精神力――これが彼に生きる力を与えてくれていた。彼だけではない。侵略国当局が抑圧すればするほど、チベット人を分断しようとすればするほど、政治囚たちは反発を強め、団結を固めていく。力と脅しによる抑圧で仮に土地を支配できたとしても、人の心と誇りは支配できないのである。同書はパルデン氏の悲劇の人生を描き、侵略国当局の悪逆非道さ、抑圧による人権無視の支配のむごたらしさと虚しさを訴えるものであると同時に、そうした数多くの"良心の囚人"たちの群像劇でもある。
釈放後もパルデン氏の闘いは続く。インドに亡命し、力による抑圧に対する言葉による反撃が始まったのだ。同書を世に出したのもその一環である。
先述したように、侵略国の抑圧に抗う"良心の囚人"は彼だけではない。彼が去った後の獄中でも、自由を求める闘いはなおも続いているだろう。
"雪の国"チベットで自由を求める熱い思い――「雪の下の炎」は消えることはない。