『中勘助の詩から』は、同志社グリークラブの演奏です。つまり伊東氏が学生指揮者だった1989年のザ・シンフォニーホールでの定期演奏会のライヴ録音が、今回20年ほど経って発売された、ということです。往年の同志社グリークラブの実力をまざまざと聴かせてもらいました。
中勘助の温かい視線が全編に感じられますし、多田武彦の男声合唱の魅力も随所に感じます。柔らかい発声ですので、密集和音が心地よく感じられ、ホールエコーを拾いながら、音の洪水の中に浸っています。ラストの♪はるのかぜ♪の量感、これぞ多田武彦、これぞ男声合唱というべきものでした。
『東京景物詩』は、北原白秋の作詩です。全日本合唱コンクールで何回も金賞(今年度も)を受賞している「なにわコラリアーズ」の合唱で、2003年いずみホールで行なわれた演奏会でのライヴ録音です。
流石に大人の男声合唱です。発声がより量感を増し、安定しています。各パートの音色が明確に分かれていますので、楽譜に描かれている姿をくっきりと浮かび上がらせてくれます。
『雪と花火』も北原白秋の作詩による名曲です。2007年の京都コンサートホールで開催された「なにわコラリアーズ」の演奏会のライヴ録音です。
現在、日本の男声合唱の頂点にいる団体の演奏ですので、お手本のような演奏と言えるでしょう。各パートが織り成す錦織のような光沢を感じさせるポリフォニーの絡みが絶妙です。柔らかい合唱を心がけており、ベルベットのような肌触りの合唱になっています。
白秋の江戸情緒を感じさせるようなたおやかな和の音楽で彩っています。古来の旋法に寄せた旋律を聴きますと、懐かしくかつ美しい情景が音楽の展開とともに目の前に広がっていきそうです。
素晴らしい合唱でした。