『雨の檻』です。
『恒星間宇宙船。ここで過す者は宇宙空間ではなく、偽の風景を見て暮らす。だが、少女の部屋の窓はもう何年も前から雨の風景しか映し出さなくなった―。宇宙船に閉じ込められた少女の運命を描く表題作ほか、自ら創造したキャラクターが模型となって動き出すことになった少女の心の動きを描き、絶賛を浴びた「そばかすのフィギュア」、著者の原点ともいえるデビュー作「ブルー・フライト」など7篇を収録した新鋭の初作品集。』
作者初の短編集だそうで、当然ながら初期作品が収録されています。
表題作『雨の檻』、星雲賞受賞作の『そばかすのフィギュア』、作者が高校生の頃に発表したデビュー作の『ブルー・フライト』が見所ということになるかと思います。
基本的にSFですし、しかもいずれも短編作品ということで、どちらかというとワンアイディアに重心がかかりそうなものです。たしかにアイディアも秀逸な作品が多いです。
が、なんといっても優れているのはキャラの心理描写です。悲しく、それでいて暖かく。
表題作の『雨の檻』が、設定的にも良くて完成度が高かったように思いますが、どの作品も基本的に上手いです。『ブルー・フライト』はさすがに、やや荒削り感はありましたけど、高校生でこれを書いたというならば、栴檀は双葉より芳しを体現した作品ということになりましょう。
評価は文句なしに★5。
ですが。
2007年にハヤカワ文庫から『そばかすのフィギュア』というめるへんちっくな表紙の短編集が発売されており、タイトルから想像つく通り、収録作品は本書『雨の檻』の7本と新作1本ですので、留意しておきましょう。