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本書はいちおうドラマの原作ということにはなって
いるが、まったく別の物語と考えてほしい。
むしろ彼女が芥川賞を受賞した前後の、私小説的な
作品の閉塞感や絶望感は消え、強い倫理性に裏打ち
された不思議な透明感のある親子愛の物語になっている。
テレビドラマでは主人公の桜井雨は高校生だが、
原作では小学6年生の無邪気さを残す少女だ。
ドラマでは何人も幽霊が登場し、残された人々の
愛情に気づくことで成仏(?)するというワンパターン
の一話完結ものになっているが、原作に登場する
幽霊は雨の父親と、ある理由で死んだ人の二人だけ。
あくまで雨と父親の穏やかな愛情が、限りある日々の
なかで静かに交感される、淡々としつつも深い感動を
残す小品。まさにフォーレの『夢のあとに』のようだ。
幽霊の希薄な存在感をさりげない文体で、説得力を
もって描く柳美里の筆力はさすが。はじめて柳美里を
読む人にもおすすめだけれど、彼女の初期の小説や
戯曲を愛していた人たちも、まったく裏切られること
はない、美しい小説である。
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