内容紹介
第4回キャッツ愛童話賞
グランプリ作品
原因不明の奇病とたたかった
三匹の子猫と家族の物語
小学校中学年以上向き
■捨てられていた子猫たち
「ねえねえ、今日のテストどうだったぁ」
「ぼちぼちかなぁ~。せっかくの夏休み最後の週なのにねぇ。映画行きそびれちゃったね」
「じゃあ、明日行こうか」
夏休みも終わりに近づいていた暑い日。高校二年生のさおりさんとえりなさんは、受験勉強のために夏休みを返上して、毎日のように学校へ通っていました。そ の帰り道のことでした。
「にゃぁぁ~にゃぁぁ~」
今にも消えてしまいそうな小さな小さな鳴き声が、どこからか聞こえてきました。
「ねぇねぇ、今、猫の鳴き声しなかった?」
「うん、聞こえたけど苦しそうな感じだったよ。どこからかなぁ」
二人は耳をすませ、あちらこちら大きな目をきょろきょろさせながら探しはじめました。八月最後の太陽はジリジリと地面をこがしています。早く見つけてあげ ないと、あのか細い声の持ち主は大変なことになってしまいます。二人はこいでいた自転車を道ばたにとめ、鳴き声をもとめて道路横の畑に入って行きまし た。
「さおちゃーん、早く早く、ここ、ここ」
えりなさんは大きく手を振りながら、少しはなれた畑を指さして大声でさけびました。さおりさんが急いで畑の中に入って行くと、透明プラスティックの小さな 箱が目にとまりました。二人はおそるおそる近づいて中を見ると、小さな箱の中に三匹の子猫がぎゅうぎゅうに押し込まれ、ごていねいに箱の上はガムテープで ぐるぐる巻きにして出られないようにしてありました。きっと中は息もできないかもしれません。
「なんて……なんてひどいことを……」
こんな状態で何時間いたのでしょうか。さおりさんは急いでガムテープをはずそうとしましたが、ぐるぐるに巻きつけられたテープはなかなかはずれませ ん。
「どうしてこんなひどいことを……。今助けてあげるからね……」
二人は涙でかすむ目を手でぬぐいながら、必死でテープをはずしつづけました。なんとかテープを取りのぞき箱の中をのぞき込むと、子猫たちはかわいそうな状 況でした。子猫たちの目は目やにでつぶれていて、水のようなウンチと吐いたもので毛はドロドロ。そしてこの暑さで透明プラスティックの中の温度は高くな り、三匹とも脱水症状のようでぐったりとしています。そして押し込められた一番下と真ん中の子猫は身動き一つせず、生きているのか死んでいるのかさえわか りません。かろうじて一番上の子猫だけが最後の力を振りしぼって「助けて」と鳴いていたのです。
内容(「BOOK」データベースより)
「つれて帰ります。私たち家族でできるだけのことをします」二人の女の子に拾われた三匹の子猫は、瀕死の状態でした。三匹は、獣医にかかって一命を取り留めましたが、そのうち一匹は、「巨大食道症」という原因不明の難病であることがわかったのです。そのとき、女の子とその家族がした決断とは…。第4回キャッツ愛童話賞グランプリ受賞作品。小学校中学年以上向き。