すばらしい本です。まずは148,149ページの見開きを見てほしい。右にサフェドの市街図、楽しいイラスト。そして左に、偉大なるイサーク・ルリアの墓に詣でる人々の写真。白黒ページでも、その青空のすみきった青が伝わってくる、人々の畏怖が感じられる。この世を流浪するすべての魂にとっての師、ルリア。その墓をいつか訪れ、この
世における自分の位置をとことん考え直してみたい、そんな気にさせられる一冊だ。流浪の中でその精神と知性をきたえあげてきたユダヤ人たちの歴史に大きな足跡を記した思想家たち、イェフダ・ハレヴィ、マイモニデス、イサーク・ルリアを追いつつ、ドイツ文学者の著者は旅をつづける。マラケシュ、カイロ、イェルサレム、サフェド、そしてヤッフォ。どんなスパイ小説、ミステリーよりもおもしろい、探究の旅。著者がルリア的精神の系譜にあるものとして引用するエリアス・カネッティの言葉が胸にしみます。「世界の息吹から遠ざけられて、おまえは、息吹どころか風も入らない薄暗い牢獄に入れられているのだ。親しいもの、個人的なもの、確実なもの、そういうものはすべて捨ててしまえ。(中略)そして、だれにも通用しない言葉、世界の息吹が与える別の新しい言葉をみずからに向かって語れ。」そうだった、きみもがんばれ、ぼくもいずれがんばる、この流浪の中で!