本書は元『日経ビジネス』発行人であり雑誌業界の裏も表も知り尽くした著者の渾身の著作である。まず、雑誌が時代とともにどう変遷していったかをたどるが、それは取りも直さず日本人の精神史を記述することになる。次いで、雑誌論はメディア論へと発展する。ネット時代となって世界で飛び交う情報の量が飛躍的に増大し、人類が過去数千年にわたって生み出してきた情報量をたった1年で凌駕する時代に入っている。目からウロコの指摘である。しかし、大量の情報=知識・知恵の増大にはならない。情報の質が問われるからである。いわゆるガセネタが自己増殖し、ついには誰もが真実と思い込む危うさがネット時代にはある。著者はさらに「ゲゼル化」のキーワードによって現代日本文明論に歩を進める。格差問題、頻発する偽装事件、親殺しなどの世相を「ゲゼル化」によって一刀両断に説明する。見事である。本書のタイトルは『雑誌』となっているが、著者がもつ膨大な知見と先見眼によって本書は優れた文明論となっている。諸賢へぜひ勧めたい良書である。 千葉県 YF生