生まれて初めて好きになった俳優は石立鉄男だった。70年代、ユニオン映画社が製作し、東宝クレージー・キャッツシリーズ等の才気あるコメディを手掛けていた松木ひろしを中心とした脚本家たちが構築した、作品は異なれど“口は悪いが思いやりが深い陽気な二枚目半”的なキャラクターをコミカルに演じたNTV系の「水曜8時石立劇場」での人情悲喜劇は、10代前半だった私にとって、本当に思い入れが多いプログラムであった。中でも、今作と「気になる嫁さん」は、再放送も含め、何度も繰り返し見ていた生涯忘れえぬ傑作だ。男手ひとつで5人の娘を育ててきたある一家に、男のかっての親友の一人息子が同居してくることから巻き起こる壮絶なホーム・コメディだが、可笑しさの中に“家族”とは何かを考えさせられるシリアスで心の琴線に触れる部分があった。このドラマ、元々石立シリーズ第1弾の「おひかえあそばせ」のシチュエーションをそのまま頂いており、いかに作り手が気に入っていたものなのかが分かる。石立の役柄はフーテン・ジャックと呼ばれる饒舌な皮肉屋だが、その実、義理と人情に厚い自身の得意なキャラで、大いに笑わされながらも、グッと熱い思いにさせられる名演だ。そして、今作は、石立のみならず、各出演者のアンサンブルが絶妙なドラマでもある。大原麗子は芯の強さと美貌を兼ね備えて素敵だし、川口晶は勇ましいし、大坂志郎や川崎敬三ら男性陣はその気の弱さと情けなさが絶品だ。そして、杉田かおるはお茶目で大人びた五女役(その名も阿万理!)で、有名なチー坊よりも遥かに強烈で魅力的と思えるキャラを演じて、今日の彼女を連想させる(笑)。石立自身はマスコミ嫌いで知られ、実際はドラマのキャラとはかなり違ったようだが、ブラウン管でのその姿は、ファンにとっては、いつまでも残り続けるだろう。合掌!