まずは「はしがき」に目を通してください。私は思わず笑ってしまいました。と同時に,今までに見たことのない"書きっぷり"は,読者の好奇心を刺激してくれます。
本書は雇用社会の25の疑問,例えば「美人だけを採用してはダメか?」という素朴な疑問に対して,法的な視点で答えます。素朴な疑問でも,内容を法的に説明するのは難しいものです。また,単なる理念の押しつけ(たとえば,いかなる差別も悪であるとの主張)だけでは,素朴な疑問は解消されません。
本書は,単に理念を述べるのでなく,現在の法律に沿って,わかりやすく説明を加えます。もっとも,個々の疑問に対して,本書は,可/不可という明確な回答を示すわけではないようです。むしろ法的に「考えるみちすじ」を示すことで,通読すれば雇用社会の将来像すらも垣間見える一冊となっています。その点で,本書は単なるQ&Aの類とは一線を画しています。これは,研究者である著者のバックグラウンドも関係しているのでしょう。
題名が類似の(Q&A系の)本はありますが,私が知る限り,現役バリバリの研究者が書いたものはありません。本書の値段は,これら類似本と比べると少し高く感じます。ただ,一度だけでなく,何度も読んで楽しめる…そんな魅力がある本です。やはり,「考えるみちすじ」です。興味深い内容と,考える「みちすじ」をリンクさせることで,本書は,読者の知的関心を刺激することに成功していると思います。続編も期待したいところです。…あるいは,26番目の疑問は,本書の「みちすじ」を通して読者自身が検討したくなるかもしれません。
本書は,雇用社会の疑問がテーマですから,まずはサラリーマンの方にオススメです。でも,それだけでなく,現役の希望溢れる学生,ロースクールに疲れた学生など,無粋な教科書の類に辟易する学生にもオススメしたい一冊です。まさに「再入門」の手助けとなることでしょう。オススメです。