論証の出発点は的確な現状認識で、それには統計が必須であるにもかかわらず、雰囲気や感覚で世論が形成されてしまう現状がある。
このような現状は、人々が「信じたい」ことを目の前に顕在化させるという立派な機能ではあるが、正確な論証ではなくなってしまう。本書は、人々が「信じたい」ことを、さまざまな統計により「ウソ」であることを明らかにしていくもの。
確かに、本書を一読すれば、メディアなどで常識として語られるさまざまな現象が、実は統計に基づかないウソであることがわかり、収穫はある。しかし、本書はそのような常識がウソであることの論証に大きく力が割かれており、ときおり書かれている建設的論証が薄弱な感がある。
たとえば、110ページの「年配者が高級なのは若年時に薄給だったから」では、搾取されている(とされる)若者の薄給は「今度は『もらいすぎ』の立場になっている」から「熟年が若者を搾取するという世代対立軸に関しては、根拠が曖昧なものが多い」というが、この論証は人口減少等により経済の縮小など、考慮されるべき要素が考慮されておらず、批判のみに基づいた論証となっている(若者が熟年になる頃、組織は現存しているだろうか?)。
このため、「ウソ」を暴く箇所は評価できるが、根拠の薄弱な「ぼやき」も混同しているので−★★。