私が大学初年度の集合位相論の授業で躓いたときに、初めて手にしたのがこの本でした。その時はテストも近く、ゆっくり勉強している時間もなかったのですが、自分はあえてこの教科書を時間をかけて頭から読み始めました。逆にそういった着実な勉強方法が、この分野においては非常に有効な手段だったのだろうと今では思います。結果、テストは最高の出来でした。
今改めてこの本のすばらしさを振り返ってみます。まず本書の一番最初の項目である"集合の概念"に対して、非常に具体的で納得のいく説明が与えられていて、ただ読んでいるだけでも集合に対する曖昧なイメージが晴れてきたのを覚えています。それ以外の項目でも、新しく習う概念の説明が、抽象的な定義の羅列に終わらないように、読者の自然な発想から思考が流れ着くような工夫がなされています。なので、高校の教科書のような感覚で、全体的にとても読みやすいです。また掲載されている命題の証明も非常に読みやすいです。記号の羅列ですむような証明も、あえてわかりやすい言葉に置き換えて進めてくれているからです。あくまで"読者に読ませるための証明"として書いたことがよく分かります。
またこの本が私にとって一番役に立ったところは、他の本では"定義より明らか"で済まされてしまうような簡単な命題(例えばA⊂B⇒A∪B=Bやf(A∩B)⊂f(A)∩f(B))に対しても、きちんとした証明を与えている点です。実際、初学者にとってこのような命題の証明は決して自明ではないし、こういった証明が自力でかけるようになることが、この分野では非常に重要だと思います。なのでこれからこの本を読む人は、この点を決して流し読みしてはいけないし、"読者にゆだねる"と言われたら、実際に手を動かしてみるべきです。