まず現代思想といっても、いわゆる"ポスト構造主義"とか"ポストモダン思想"との関わりは少ないので、そちら方面を期待している方は注意しましょう。この本ではもっと実践的な政治・社会・法哲学に重点を置いていて、ロールズのリベラリズム、ノージックのリバタリアニズム、サンデルのコミュ二タリアン、ローティのリベラルアイロニストなど、アメリカ現代思想の巨人たちの思想を紹介しつつ、さまざまな価値観を持つ人々がぶつかり合わないようにするために自由、平等、正義、共同体といった概念をいかに捉え、いかに理想的な社会制度を構築するべきか、その難問へ立ち向かう思想家達の格闘の歴史が書かれています。
そして同時にそういった思想が生まれた背景であるベトナム戦争や黒人差別、アクチュアルな政治情勢にも触れており、ちょっとしたアメリカ現代史の勉強ができるような構成にもなっています。
また本書ではアメリカのリベラリズムと日本の政治・社会・哲学とのつながりにも触れられていて、人種のサラダボウルといわれるアメリカでのリベラリズムの盛り上がりと比べて、国として一定のまとまりを持っていた日本では"アメリカの哲学"はずっとマイナーだったというくだりなど、読みながらその違いについて考えたりするのも面白いです。とはいえ現在では日本でもアメリカの哲学の影響・重要さはますます増しているようで、ぼくなんかは本書を読み、そのルーツを知ることで現在の政治・哲学の状況についてすごく明るくなった気がしました。宮台真司氏や北田暁大氏、東浩紀氏などの日本の人気の学者・思想家の著作が好きな人は、本書を読みながら「あの本で書いてたことはローティの影響だったんだな」などと思うこともあるかもしれません。
筆者は"本講義のねらいと構成"で「アメリカの自由をめぐる一つのストーリーにまとめることを試みた」と書いていますが、そのねらいはかなり達成されているのではないでしょうか。