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雁 (岩波文庫 緑 5-5)
 
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雁 (岩波文庫 緑 5-5) [文庫]

森 鴎外
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

生まれてすぐに母を亡くし,貧困の中で父親に育てられたおとなしい娘お玉,父親に楽をさせたいと高利貸し末造の妾となった.上野不忍池にほど近い無縁坂にひっそりと住むお玉は,やがて,毎夕の散歩の道すがら家の前を通る医学生岡田と,窓越しに微笑を交わすようになり….円熟鴎外の哀感溢れる中篇.(解説=稲垣達郎)

内容(「BOOK」データベースより)

生まれてすぐに母を亡くし、貧困の中で父親に育てられたお玉は、高利貸末造の妾となり、上野不忍池にほど近い無縁坂にひっそりと住んでいる。やがて、散歩の道すがら家の前を通る医学生岡田と会釈を交すようになり…。鴎外の哀感溢れる中篇。

登録情報

  • 文庫: 178ページ
  • 出版社: 岩波書店; 改版 (2002/10/16)
  • ISBN-10: 4003100557
  • ISBN-13: 978-4003100554
  • 発売日: 2002/10/16
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 1.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 114,207位 (本のベストセラーを見る)
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2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ちっちゃいおばちゃん トップ1000レビュアー
形式:文庫
古今東西、恋愛小説の傑作はいくつもありますが、他を断然引き離して私のダントツ一位なのがこの作品です。
読む度に胸が締めつけられ、切ない余韻がいつまでも残る。若い時からこれは変わりません。

女性の自活の道が閉ざされていた明治の世。
ゲスな金貸しの囲い者として人からさげすまれ、うっ屈した日々を送るお玉は、
ある日、妾宅の前を通りかかった美貌の帝大生、岡田に恋心を抱きます。
身分違いの恋とは知りながらも、岡田に対するお玉の思いは日々に募って、抑えがたいものになっていきます。

そんなお玉に訪れた千載一遇の機会。
岡田を宅に迎え入れ、親しく言葉を交わせるかもしれないチャンスが、ついにやってきたのです。
お玉は念入りに身支度を整え、大胆にも道まで出て、岡田をじっと待ちます。
しかし、ついに現れた岡田は…

たった一度のチャンスが悪意のない偶然によって虚しくついえ去っていく悲しさ。
お玉の張り裂けそうな胸の内が、息苦しいほどに伝わってくる名シーンです。

鴎外の作品は出来不出来の差が激しいのですが、これは文句のつけようのない出来。
文章も非常に読みやすいですし、鴎外は初めてという人にもおすすめです。
日本が生んだ恋愛小説の傑作をぜひお楽しみください。
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1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
『雁』(森鴎外著、岩波文庫)は、明治10年代の東京のしっとりとした情感が漂ってくる作品。親のために高利貸しの妾になっている、貧しいけれど美しい娘。いつも窓の外を通るあの医学生がこの境遇から救い出してくれるかもしれない。思い切ってあの人を家に招こうと、娘は決心する。
このレビューは参考になりましたか?
4 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
 女の美しさを存分に引き出すことがエロティシズムと呼ばれるならば、鴎外はそれを余すところなく抽き出すことに成功した。エロティシズムとは肉欲ではなく、生命の内なる輝きのことであり、その全き観念性のことだったのだ。お玉を妾として囲っている金貸しの末造との間の性描写を鴎外が描かなかったからではない。むしろ、本妻のお常との愛想尽かしの腹いせに性描写が露骨にあっても不自然ではない。お玉が、末造が想像した以上にエロティックになっていくのは、別の理由があるのだ。他ならない帝大の学生岡田の存在である。お玉にとって末造は単なる否定的媒介にすぎない。お玉の生命、それを鴎外は「性命」という言葉を使うのだが、それを直截に賦活するのは岡田なのだ。岡田は『金瓶梅』も読む誰しも一目置く優等生であり、優秀なスポーツマン、競漕の選手でもあるが、鴎外が描くその岡田には、どことなくリアルな感じがない。抽象的で観念めいた存在に思える。この影のような形式的な描き方がお玉の肯定そのものである性命と明確な対比を浮き彫りにする。死の天使(P14)、蛇や雁の死の暗喩と、お玉の艶かしい性命の輝きがこの小説に絶妙なバランスを与えている。生と死のパラドクスとは、引きつけつつ遠ざける斥力と引力の観念的力学なのだ。鴎外はこの生と死を巡る観念のドラマを描きたかったのだと思う。一方にお玉を生命の象徴として、他方に岡田を死の象徴として明治末期の時代性を鴎外は描こうとしたのだろうか? 平成の世に生きる一評者の目には、二人の間を冷徹に観想してみせる「僕」=鴎外の、生と死の狭間で逡巡する姿が映る。生と死は連続しているとか、同じものだとかいう「達観」は、それはそれでいいのだが、鴎外のこの峻厳な対立の中に留まりつつ凝視する姿勢こそ、今見るべきものがあるのではないだろうか?
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