全十七話から成る実話系怪談集です。
前作と同様,体験者が語るあるいはインタビューに答えるという形式になっており,「身の毛もよだつ恐怖譚」といったたぐいの話は,ほとんどありません。
印象に残ったお薦めとしては―
○〈受話器の声〉…受話器から声が聞こえてくるという話ですが,電話ではなく「インターフォン」であるところが,珍しいです。
○〈幻想の恩〉…やはり,山には「異界への入り口」があるものなのでしょうか。
○〈悲しみの祖父〉…「悲しみ」というより,「哀しみ」と表現するほうが適切な気がします。人間の思い―特に憎悪―は,どのくらい続けば薄れるものなのでしょうか。
○〈息子の証明〉…最終話であり,本作の副題ともなっている話です。この一話のために本書が書かれたいってよいほどです。確かに「怪談」ではありますが,それよりも「家族の愛情物語」の側面が強いです。また,〈追記〉も合わせて一話と言えましょう。
題名の通り,「怪」は常にわたしたちの「隣り」にあるものなのかもしれません。特に最終話を読むと,一層それを感じます。