感覚的に短編と言うよりも中篇を読んでいる気になります。表題作『隣りの女』の他に『幸福』『胡桃の部屋』『下駄』『春が来た』が収録されています。この作品には、言葉や匂いや仕草などそこはかと漂うエロスがあります。他の作品よりも、その感覚的なエロスが色濃く出ているような感じです。性描写じゃないのに、エロいです。雰囲気だけで醸し出されるエロスって、何よりもエロい気がします。まぁ当然ながらそれだけが主体ではなく、ただ一見普通に見える人達が、フトした瞬間に、ある事をきっかけに変わっていく。良い方向だったり、悪い方向だったり。普通と言うことの恐さ。この中で『下駄』だけ男性が主人公ですが、かなりホラーで恐いです。こう言う作品もあるんだなぁと思いました。この本はすべてがオススメです。強いてあげるなら、『隣りの女』と『春が来た』は絶品です。全体に漂う恐さとエロス。そう言えば本のカバーもちょっと恐いです。夏に、とは言いませんが、これは是非手に取ってもらいたい一冊です。