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階層化日本と教育危機―不平等再生産から意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)へ
 
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階層化日本と教育危機―不平等再生産から意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)へ [単行本]

苅谷 剛彦
5つ星のうち 4.1  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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階層化日本と教育危機―不平等再生産から意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)へ + 希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く (ちくま文庫)
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商品の説明

出版社からの内容紹介

問題の提起/流動化の時代/メリトクラシーの時代/能力主義と「差別」との遭遇/平等主義のアイロニー/不平等問題のダブルスタンダードと「能力主義的差別」/大衆教育社会の中の<学歴貴族>/努力の不平等とメリトクラシー/<自己責任>社会の陥穽/<自信>の構造/インセンティブ・ディバンドと未来社会の選択

内容(「BOOK」データベースより)

本書は、できるだけ実証的な研究をベースに、教育の場で進む階層化の実態とそのメカニズムとを解明しようとするものである。教育というスクリーンに映しだされる日本社会の階層化の動きをとらえることによって、私たちは、いま起こりつつある「階層と教育」の局面変化が、どのような影響を私たちの社会に及ぼしうるのかを知ることができるだろう。

登録情報

  • 単行本: 245ページ
  • 出版社: 有信堂高文社 (2001/07)
  • ISBN-10: 4842085258
  • ISBN-13: 978-4842085258
  • 発売日: 2001/07
  • 商品の寸法: 21.4 x 14.8 x 2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.1  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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形式:単行本
凄まじい名著。教育のなかにどのような格差、階層差が生まれているのか。早い段階から私立校で英才教育を受ける子供たち。学級崩壊する学校でやる気を失っていく子供たち。その違いは何であり、どこから生まれたのか。本書は教育における格差問題を扱う。その扱い方は徹底して科学的だ。つまり、調査結果に基づく統計データを様々に利用し、議論を組み立てていく。この議論は極めて説得的である。もちろん、それは著者の見解がすべて正しいことを意味するわけではないが。

本書は教育における格差問題を、統計データによって定量的に明らかにした。だが本書の価値はそれに尽きない。もう一つの論点は、そのような格差を見えなくしてきたものは何か、という問いだ。教育に関する我々の理解を問う、メタ的な視点である。これを巡り、著者は日教組の全国集会の記録を丹念にたどっていく。この文献学的視点は、驚くべきものだ。個人的にはここに魅力を一番感じた。

著者によれば、我々は次のような時代を生きている。戦後、主に農民層が教育を受けられるようになった。こうして(ほとんど)誰もが高等教育まで受けられる、大衆教育社会が生まれた。このことは、本来背後に存在しているはずの格差を見えなくした。かくして、教育の問題とは、実際の格差(階層、人種、性別等)に基づく差別ではなくなった。そうではなく、個人の能力に基づいて個人を序列づける、能力主義が教育問題となった。社会階層の裏付けを持たないことの差別は、<差別感>の問題というように、感情の問題になってしまった。差別感を持たせることがすでに差別であるから、そのような差別感について論じること自体が差別感を持たせる。かくして、教育論議から学問的議論は消失したのだ。

だが、議論が消失しても格差は消えるわけではない。誰に対しても平等に処遇する、という日本の奇妙な「処遇の平等」。これは機会の平等でも結果の平等でもない。それが証拠に、処遇の平等の背景で、できる人は優秀な私立校へと「逃げていく」。著者の言う「ブライト・フライト(優等生の逃避)」が起こっている。かくして、処遇の平等を求めることは、実際の処遇の差をますます深めていく結果になるのだ。皮肉な結果である。

著者の議論は、さらに「努力」の問題へ切り込む。個人の能力でなく、努力の問題。どれだけ意欲を持ち、努力するかすらに、ある程度、階層差が見られるのだ。そして「自己責任社会」の下では、努力する・しないは個人の問題だ。個人は、努力の結果を引き受けなければならない。だが、そもそも努力に階層差があるのなら、これは個人の問題ではありえない。この点を隠蔽した結果はどうなるか。努力しなかった人は、社会の要請通り、それを自分の責任と引き受けてしまう。つまり、努力しなかったその結果に満足し、安住してしまう。階層的に努力の差があると見られる人ほど、「自分にはいいところがある」と自信を持ってしまうのだ。こうして、意欲・努力そのものの階層差が広まる。「意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)」の成立である。

「努力」という極めて個人の資質とされてきたところまで広まる格差。そして未だにそれを覆い隠す、教育論議。この本には、スタートラインから格差が付き、そして挽回のチャンスが減ってきている日本社会への憤りと、それを認識・理解しない教育論議への痛切な批判に満ちている。著者はこの社会への対処法を描いている。多様な教育機会を可能にするキャリアファンドの設立だ。ともあれ、本書の主眼は分析と批判であることに変わりない。

もちろんのこと、本書の分析は完璧ではない。特に後半の、努力の階層差についての議論。重回帰分析の読み方に、素人目にも疑問が残る。だがその批判は、同じく統計データの定量的分析をもってなされるべきだろう。本書のスタイルと圧倒的な説得力は、それを迫るのである。

教育において、定量的分析を用いた厳密な議論を避ける風潮。果てはその正当化に、「教育は数字では測れない」などと言われる始末だ。個人的にはそのような風潮を徹底して批判した本書に、すがすがしい爽快感を覚えた。まさしくこれが、実証的な研究がもたらす学問の力なのだ。だが本書が突きつけた内容は、そのスタイルとともに非常に重いものである。本書の内容を踏まえずして、教育について語ることは許されないだろう。
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52 人中、44人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
多くの人が直感的に生まれた家庭環境による違いがその後の成長の違いに影響を及ぼすと思いながらも、低学歴の両親と高学歴の両親によって子供の成績や進学意欲に与える影響が異なっていることを語りたがりません。差別や区別に関する感情を遺棄するよう"訓練"される現代の私たちの社会では、多くの教育に関する政策なども遺棄の結果見えなくなっている環境の違いを埋めることを意識しません。その為に、近年行われるゆとり教育の結果、教育に関して強い個人たり得る(高学歴の両親を持つ)上位層の子供とそうではない子供との間に、厳然たる格差を拡大させているわけです。本書は、社会が子供に勉強する意欲を弱めるバイアスをかけるほど、上位層の子供に対して下位層の子供が学習意欲を弱めている実態を様々な統計から明らかにしていきます(個人的には、重回帰分析の結果の読み解き方に賛意を持てない箇所もありましたが)。限りある人的資材を社会が有効に活用するという意味でも、個人がその能力を遺憾なく発揮できるという意味でも、なるべく生まれた環境(階層)差を埋める努力は為されるべきでしょう。その為にはわたくし達が厳然と存在する格差に目を向けどのような社会を構築していくべきなのか、本書はそれを考えるよいきっかけになるのではないかと思います。
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39 人中、30人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
サントリー学芸賞と大佛次郎論壇賞を同時受賞した著作。全体としては論文集であり、あちこちで行った調査データに基づく分析が基調をなすが、本書を特徴づけるのは一貫した階層へのこだわりである。同和地区の生徒の学力不振にしても、「部落差別」と「階層」を分析的に区別し、階層問題の大きさ指摘したり、70年代と90年代の時系列的比較により階層格差が広がっていることを指摘した点など、著者の面目躍如と言った感がある。データ解釈で強引な部分もあるが、それはご愛敬か。
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