本DVD、フランク・キャプラの生涯と作品を紹介するドキュメンタリーであるが、かなりの力作! インタビューに登場する顔ぶれもなかなか豪華−−−M.スコセッシ、O.ストーン、P.フォークなど−−−であるが、それ以上に、キャプラの生涯と作品に対して、かなり踏み込んだ鋭く深い解説がなされているのが印象的。作風が甘い、と言われ、通俗的な人情もののイメージが強いキャプラであるが、実際にはそれほど単純ではなく、観ることのできる者の目には、暗く複雑な影の部分がどれほど色濃く作品に反映されていたのか、ということを実感させてくれる。聴衆が潜在的に望んでいるものを、映像として目に見える形にしてみせるという課題と、創造的なパッションを自らのうちに抱え込んだ創作者としての矜恃とが、複雑に絡み合いながらぶつかり合い、その葛藤から生まれる緊張感が、キャプラ映画の放つ独特の輝きであり、一見簡単そうに見えて、誰も真似をすることができなかった際だった個性をなしているというのである。こうしたことを、特に印象的なシーンを提示しながら具体的に解き明かしていく部分は、なかなか説得力がある。
本作はまた、サイレントからトーキー、そして戦後の赤狩りの頃までのハリウッドを、第一級の監督として駆け抜けたキャプラの生涯をたどることによって、黄金時代の到来と凋落という、夢の工房−映画王国アメリカの20世紀激動史のダイナミックな回顧ともなっている。そういう意味で、映画史的な記録としても、なかなか考えさせられる。
それにしても、ふんだんにちりばめられたシーンの一つ一つは、何ということもないようなワンカットであっても、どれもピカイチの名シーンばかり。もとの作品を観たことがない人でも、記憶に残るような見事なシーンばかり。これだけ見事なシーンを沢山撮り続けた人、そんなにはいない。こうしてみると、フランク・キャプラ、本当に凄い監督! 映画好きならば、是非一度は観て欲しい、見事なドキュメンタリー。
因みに、併収されている『陽気な踊り子』は、失われたと思われていた、キャプラのサイレント時代の作品。いわゆるバック・ステージもののコメディであるが、後のキャプラ−タッチが既に窺える名作。ベッシー・ラブが主演というのも面白いが、貴重な作品、という売り込みなんかなくても、十分愉しめる面白さ。観ているうちにサイレントであるということを忘れさせてしまいます。