楽しく観ることができる映画でしたが、原作の方が洒脱です。伊坂幸太郎の作品が洒脱なのは、登場人物の「見てくれ」ではなく、会話の軽妙さによるものです。そして会話を裏打ちする一本筋の通った清々しい生き様が、読む者を気持ちよくさせる。映画は非常にスタイリッシュで、アバンギャルドなファッションも俳優や女優たちに似合って格好良かった。しかし、成瀬、響野、雪子、久遠の会話のキレや人物像の描き込みは中途半端でした。これだけセクシーな俳優たちをキャストできたら、かれらがスクリーンに映るだけで、充分にスタイリッシュだったはずで、日常と解離したファッションが必要だったのか疑問です。エピソードを増やすよりも、4人の魅力をもっと描いてほしかったし、エピソードが増えたことによってアクションは派手になったけれど、驚きはむしろ減っています。
総じて、人間を描いたり、頭脳戦を描いたりという「地味な面白さ」を演出して勝負する自信のなさが露呈していると感じました。自信のないところを、表面的なファッションやガジェットで覆い隠そうとしている感じ。
伊坂幸太郎の作品は、日常的な会話、日常的な行動が、ほんの少し非日常にシフトするところに、不意打ちのようにエンターテインメントが産まれるところがすばらしいと、ぼくは思っているので、原作との差違云々ではなく、映画がそのレベルで勝負してくれなかったのはぼくとしてはかなり残念でした。こういう映画をつくりたいのなら、別に伊坂幸太郎の原作じゃなくてもいいじゃん、ってことです。