秘密兵器を研究し、終戦前に証拠が殲滅された登戸研究所の姿を元研究員が書き残した。
登戸研究所とは言うが、場所としては現在の小田急線の生田駅に近い。現在は、明治大学の生田キャンパスとなっている。実験に使われた動物の慰霊碑や、一部の建物が往時の姿を残しているという。キャンパスの道路などの形は本書P11の見取り図そのままだ。
登戸研究所というと人体実験や731部隊との繋がりばかり強調される側面があるが、本書は研究所の幅広い全貌を明かそうとするところに特徴がある。
諜報戦に用いる秘密インキや、尾行者探知用特殊眼鏡「バックミラー」、中国紙幣の贋物作りなどの一風変わった記述も。風船爆弾による合衆国での心理的被害の大きさなども書かれている(物的被害は少なかったものの、合衆国のすべての州に着弾し米政府を慌てさせたという)。
特に興味深いのは、資金を注ぎ込んだものの実用化に至らなかった「く」号研究だ。コードネーム「く」号とは「怪力(くわいりき)電波」のことで、超短波により飛行機を落とすことをもくろんだ物。
著者は数年かけて本書を脱稿した直後、87歳で亡くなったそうだ。