長編を入れるとシリーズ7作目ですか。著者のあとがきを読むと、著者のこのシリーズに対する或る意味では居直りともいうべき心構えが開陳されています。そうか、「マンネリをおそれない。...ぼく自身が身を置いている現実の季節から始めることになっている」、そういうことだったのですね。今回もバランスよく、春、夏、秋、冬、初夏を舞台とした作品が登場します。謎解きの魅力自体は他のシリーズと同じく二の次です。ここに出てくるのはいつも変わらぬ人間の業です。特に印象的なのは、「棗坊主」です。なんといえない不思議な会話の後につぶやかれる「ま、しかし、一生とはこのようなものでありましょうなあ」という結語はなんともいえない余韻をもたらします。