本書に収録された6つの短編も、連綿と続くその伝奇ロマンの一片。鬼や死霊、生霊などさまざまな「ものの怪」が登場するが、彼らがものの怪であることには、それなりの理由があるのだ。人間をたばかり、殺すことだけが彼らの目的ではない。この世に「怨み」があるから、ものの怪は存在するのである。
安倍晴明は、そんな彼らを退治することはしない。ものの怪の存在理由を明確にし、彼ら自身を納得させるのである。派手な活劇は登場しない。「蟇」では、我が子を殺された両親の怨みを、「鬼のみちゆき」では、男に捨てられた女の怨みを、晴明はじっくりと聞く。そして彼らの怨念を解きほぐしてやるのだ。
決しておどろおどろしいストーリーではない。むしろ、知らず知らずのうちに「怨み」を生んでしまう人間の哀しさが、一編一編の話からにじみ出ている。陰鬱(いんうつ)でもない。各話中で交わされる、晴明と博雅の会話が実にひょうひょうとしていて、ときにおかしさを物語に添えているのだ。
哀しさとおかしさの真ん中で、安倍晴明が涼やかに平安の人間と闇とを見つめている。(文月 達)
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他のレビューにもあるように、私もおどろおどろしい印象は受けませんでした。時間もゆっくり流れているように感じられたし…‘物の怪’もそれぞれの事情があってただ単に恐ろしいと言うだけでなく、どこか同情したくなるような哀愁を感じました。
シリーズということでぜひ揃えてほしいと思います。文庫サイズだと安価で持ち運びもできるのでオススメです!
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