著者は、戦後国会議員になった外交官で、本書が扱っている昭和初期から
太平洋戦争直前まで、中国外交畑を歩んだ人物である。
しかもほとんどの期間を、東京中央でなく、奉天,ハルピン、上海で過ごし、
張作霖爆殺、満州事変、華北工作、日華事変(日中戦争)などの事件について
現地交渉や折衝に走り回っていた。本書はその回顧録である。
現場の生々しい回想があるとともに、軍人・官僚・浪人すべてにわたって
色々な人物の意外な側面を描き出していたりもして、非常に興味深い。
しかも著者はこの後ワシントン、ニューヨークで真珠湾攻撃を迎え、
対米開戦後はポルトガルにあって西洋から太平洋戦争を見ていた。
その時期を回想した続刊『
真珠湾・リスボン・東京―続一外交官の回想 (岩波新書 青版 45)』も面白い。
岩波書店は、この二冊を「復刊」扱い止まりにしないで欲しい。
ただし同時代人を読者対象として書いたのか、当時の日中関係の大略は
解説されていないので、基礎知識のない人には向かないかもしれない。
また、文章が旧字体なので、それが全く読めない人にはお勧めしない。