ミステリとしての矛盾や破綻など、不満な点は多々あるかもしれない。
だが、本作は乱歩だからこその作品であり、乱歩らしさがいかんなく発揮された、まさに乱歩ミステリの傑作である。
主人公が美女の魅力に惹かれ、異常な世界に巻き込まれる、というのは乱歩以外でもよく見る設定である。
だが、その惹かれるところが“みみず腫れ”というのが、いかにも乱歩らしい。
そして、妖しい雰囲気のなか、ストーリーは主人公を中心として動いていく。
そう、ラストまで読めば、主人公中心というのが必然であった事が分かるのだ。
そして、あの有名なミスディレクションというのか、レッドヘリングというのかもまた、乱歩だからこそのものである。
最後の不明快さには賛否両論があるだろうが、これもまた乱歩らしい。
中途半端に放り出されたような感じがまた、独語の印象がいつまでも続く要因なのだ。
かつて松竹だったかで映画化された。
あおい輝彦主演であり、「サスペリア」とどちらを見ようかと迷った末に「陰獣」を見たものだった。
しかし、いかにも乱歩らしい雰囲気の、期待にそぐわない良い映画化作品だった。