本書は、桃源社版作品集「青白き裸女群像」の改題新版である。
収録作品は、桃源社版と同じ、表題作、「青白き〜」、および「妖花イレーネ」の三作である。
いずれも、橘外男の妖しい作風を堪能するのには十分だ。
残念なことは、著者の怪談、「逗子物語」や「蒲団」などが収載されていないことであろう。
そう、著者は怪談作家としても、非常に優れている。
「私は呪われている」は「怪猫お玉が池」のタイトルで映画化もされている。
本書収載の「青白き〜」も、天知茂主演で新東宝で映画化された。
タイトルは「女吸血鬼」だったと思う。
また、「地底の美肉」のタイトルで、舞台を変更して自身がリライトしたことも有名である。
業病の男が、美女を誘拐しては地底に閉じこめ、自分と同じ業病に罹患させてコレクションするという、犯罪実話のような作品だ。
「陰獣トリステサ」は人獣混交ものとして有名であり、池上遼一によりマンガ化もされている。
そして「妖花イレーネ」は、ある種の怪物譚といえるだろうか。
本作はもちろんエーヴェルス「アラウネ」からインスパイアされたものである。
エーヴェルスの作品は、「妖花アラウネ」のタイトルで映画化もされている。
いずれも、著者独特のエロティックな描写が特徴であり、また持ち味でもある。
この下世話なくらいのエロ描写を許容できる読者には、本書収載の作品は、とてつもなく面白い。
それは、著者のストーリーテリングが巧みであり、また異国情緒たっぷりの作風によるのかもしれない。
どこか、他人事のような、身近ではない話として感じる。
著者の作品はなかなか手に入りにくいのだが、しばしば本書のように、不意に刊行されることがある。
まとめて読むのには、「橘外男ワンダー・ランド」6巻があり、それは怪談からユーモアものまで、幅広いジャンルの作品を網羅している。
私は、著者の作品を桃源社版で最初に読んだため、著者の作品に対するイメージが、陰湿でエログロでといったものになってしまった。
だが、著者には秘境ものや怪異譚ものなど、実にさまざまなジャンルの作品がある。
それを知っていて本書を読むのと、知らないで読むのとでは、作品から受ける印象が全く異なる。
だから、本書は、ある程度著者の作品を知っているひとに薦めたいが、初体験というひとには、著者のイメージを妙にしかねないので、あまり進めたくない。
そんな作品集である。
もし覚悟があるのなら、橘外男初体験でもどうぞ。
間違いなく、著者の熱気にうなされる一冊である。