アメリカの法廷小説が面白いのは、まさしく一般市民が評決を下す陪審制があるからである。だから、判決がどちらへ転ぶか最後までまったくわからない。主人公である優秀な(そして、ハンサムで冗舌な)弁護士・検事が、移り気な陪審員を言葉巧みに誘導し、勝利の判決を勝ち取るというのが普通のアメリカの法廷小説のパターン。しかし、この小説でついに陪審員に主役の座がまわってきたのである。
ジョン・グリシャムが書いたのだから、エンターテイメント性は抜群。最後の最後までハラハラドキドキ。だけど、抑え所をしっかり抑えているのもジョン・グリシャム。タバコ訴訟というのは全米で大きな問題になっているし、法外な賠償金の判決など陪審制が抱える問題も浮彫りにしている。
そこで気になったのが陪審制という制度そのもの。日本でも導入が検討されているといわれるが、「陪審コンサルタント」のような職業が暗躍し、陪審候補者の選挙の投票結果や個人の生活をすべて覗かれ、公判中にはホテルに缶詰め。はっきりいって恐ろしい限りである。導入については、もう一度良く検討してほしい。ニュースの司法制度改革についての解説などよりも、ずっと陪審制の実態について理解できると思う。そういう意味でも、ぜひオススメの一冊である。