65歳以上の高齢者が人口の半数を超え、社会的共同生活の維持が困難な状況におかれている『限界集落』の概念を1988年に初めて提唱した筆者による、20年以上の各地の限界集落のレポートの集大成が本書である。
この限界集落、単語のイメージからは高度成長期の向都離村により寂れきった農山漁村が想起されるが、決して地方だけの問題ではない。
それどころか、東京のど真ん中、新宿においてさえ住民の高齢化によりコミュニティの維持が不可能になりつつある地域が存在するのである。
また、本書では触れられていないが、都市郊外のいわゆる「ニュータウン」においても、同様の事例が報告されている。
都市郊外での事例については、福原正弘『
ニュータウンは今』(1998年、東京新聞出版局)・福原正弘『
甦れニュータウン―交流による再生を求めて』(2001年、古今書院)に詳しい。
無論、大多数を占める地方農山漁村の事例が本書では最も多く取り上げられており、全国の新聞社との協力の下、豊富なフィールドワークに基づいた多彩な記述が登場する。
その筆致には、やるせなさ、怒り、悲しみといった、従来社会学人文科学では客観性を欠くとして捨象されてきた多くの負の感情が、そして、その困難な状況をいかに好転させようかという多くの人々の意欲が、深く感じられてならない。
そこが、本書のタイトルが単に『限界集落』だけでなく、『限界集落と地域再生』となった所以でもあろう。
しかしながら、本書においては非常に惜しい点がある。
それは、豊富な全国の事例を多々取り上げつつも、それらを総括し、より高い次元での議論に結びつける章が設けられていないという点である。
投げっぱなしのような印象を受けるのが残念でならない。
とはいえ、本書は『限界集落』問題の現状を考え、その解決策を導き出す上での大きなヒントとなろう。
地方自治体の職員や、村落社会学/地理学等の学徒には是非一読をお勧めしたい。