中国では、1840年のアヘン戦争をもって「屈辱の近代」幕開けとしていることもあり、アヘン問題は帝国主義とのリンケージで捉えられることも多く、社会的なコンテクストだけでなく、政治的にもことのほか重要視されているようです。
本書は、日中両国の血を受け継ぐ著者が、古代から現代に至るまでを対象に、中国人とアヘンとの一筋縄ではいかない関係を一般向けに平易な言葉で解説するものです。アヘン戦争の経過が中心となっていますが、そのほかにも、中国で大流行したアヘンが日本で蔓延しなかったのは何故か、とか、国民党・幇会・アヘンの三角関係など、興味深い話題が盛り込まれています。
なかでも注目すべきは、共産党根拠地におけるアヘンの取扱を示唆するくだりです。本書に収録されているのは断片的な記述に過ぎず、また証言者のアイデンティティも明示されていないので、これだけをもって共産党とアヘンの関係を云々することはできません。しかしながら、延安時代等における共産党の資金源に関してはさまざまな憶測がなされてきたところであり、本書の記述にも興味をそそるものがあります。
著者は歴史の研究者でもアヘン問題の専門家でもなく、基本的な事実関係に関してすら、ところどころ心許ない記述が散見されます。しかしながら、アヘンという素材を扱う一般向けの分野史は珍しく、中国史の隠れた一面を垣間見るという意味で、それなりに面白い本だと思います。