この人の評論のスタンスの一つに「自衛隊装備のガラパゴス化」というものがあります。
ガラパゴス化している故に、無駄な装備が多い、税金の無駄遣いだというものです。
本書でもそれが根底にあるのですが、全く意味の無い批判だといえるでしょう。
ガラパゴス化は国際競争力を論じる時に出される概念ですが、日本は武器輸出三原則で輸出すらしていません。
またどこの軍隊でも装備の開発や調達に先立ち要求をだしますが、清谷氏は自衛隊のそれを「防衛利権の為の合理的でないもの」とし、本来は不要な要求を出しているとしています。
そもそも論で言うと、どの国の装備でも各国の事情に基づき開発されているので、平たく言えば各国ともガラパゴス化しています。
グリペン戦闘機はスウェーデンの事情によりガラパゴス化しており、メルカバ戦車はイスラエルの事情によりガラパゴス化しています。
輸出が成功するか否かは、その事情を踏まえた仕様が他国で受け入れられるかどうか、政治的に可能であるかどうかにより左右されるのです。
また輸入することの是非は、開発できる装備かどうかを検討した上での選択肢の一つに過ぎません。
氏は最近10式戦車として制式になった新戦車について、「軽いから諸外国のMBTより防御が弱い」と批判。
ブログも含めた彼の言動を踏まえれば、小型軽量化要求はレオパルド2やエイブラムスを排除するための、不合理なものと認識しているようです。
しかし基本設計が30年前の、改良すれば重厚長大化しかねない装備を新規調達するのが、お得な買い物とは思えません。
それに10式と諸外国のMBTでは5mの高級車と4〜4.5mの小型乗用車ほど大きさが違い、加えて装甲材の改良を重ねた結果としてあの重量なのです。
その小型化の為に、エンジンは90式の10気筒1500馬力から8気筒1200馬力に小さくしつつ、無段変速機を採用して軸出力を向上させ動力性能を向上させるといった対応もしています。
素材の軽量化を無視、物体の容積も無視し、重量だけで防御を比較する意義はありません。
氏の国際関係論や政治に関する主張は、見るべきところは大いにあります。
しかしこと装備類に関しては根拠を欠いたり思い付きのような発想をし、また装備を見て運用を考えるきらいがあるので、良い評価はできないですね。