お互いにライバルと目される関係にあった複数の物理学者たちの物語である。我々にとって、特に関心が深いのは湯川秀樹と朝永振一郎の二人の関係であろう。この二人を扱った章では明確に述べられてはいないが、公的な場面以外ではかなり険悪な関係であったと推定できる。たとえば、この二人と縁の深かった物理学者の手による回想記「湯川秀樹と朝永振一郎」中村誠太郎、読売新聞社(1992)には、晩年の湯川が朝永を評した一節が述べられている。また、湯川がその協力者たち(坂田昌一、武谷三男)と会談した記録「現代学問論」湯川秀樹、坂田昌一、武谷三男、勁草書房(1970)の「数学なし物理あり」の章においても湯川による朝永の評価が示されている。いずれにしても、二人の微妙な関係がうかがえる。その他にも、面白いエピソードが採録されている。