佐々木氏が海外では「日本のディアギレフ」と呼ばれているとか以前読んだ記憶があります。日本のバレエ界の「大物」です。「世界バレエフェスティバル」を開催し、シルヴィ・ギエムを日本に招聘し続ける方ですね。大物アーティストの後ろには大物興行師がいる、と。
バレエ好きの方にはもちろん「買い」ですが、舞台興行の世界も垣間見せてもらえる大変に興味深い一冊です。
伝説のダンサーや振付家とのこぼれ話が続々登場して飽きません。個人的にはバランシンについての話を大変興味深く読みましたが、ベジャールとも懇意の方らしく(日本ではベジャール人気の方が上ですね)、ベジャールやジョルグ・ドンとの数々の逸話も素晴らしい。晩年のジョルグ・ドンとの食事の様子など、あっさりと書かれているのに万感の思いを感じます。
全編通じて佐々木氏のズバリとした物言いが何か大変に健全な感じで、気持ちが良い。体育会系というか。亡命後のバリシニコフが演出した『ドン・キホーテ』に難色を示して(私も紙吹雪が舞うフィナーレなど嫌だったな)、「そもそも僕は亡命が嫌いだ」と断言する様子など、お、男らしい、なんて。「ベジャールが三島由紀夫に心酔する理由が分からない」とズバリと言うし。佐々木氏は舞台の仕事を通じて三島と直に接した経験をお持ちなんですね。三島体験を語る率直な口ぶりが素晴らしい。平たく言うと、「ヘンな人」「理解出来ない」と(笑)。
佐々木氏は、自分は英語も下手なのに何故こうも外国のアーティストたちと繋がりを持てたのか、と不思議がってらっしゃいますが、まぁこういう方を本当の「国際人」と言うのでしょう。要するに、国際人とは絵に描いたモチの抽象体ではなく、国際的な「仕事」を立派にこなす人である、という訳で、高校生あたりに読ませても良い本だな、などと思いました。