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7 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
現実と学との超克,
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レビュー対象商品: 闇屋になりそこねた哲学者 (単行本)
戦前戦後の混乱期に翻弄され、自分の可能性と現実との落差に苦しんでキルケゴールとドストエフスキーを愛読していた青年が、偶然とも山勘ともつかない形で「存在と時間」を読もうと決心して大学の進路を決め、所を得るや蚕が葉っぱをむさぼり食うように外国語を習得して学の世界と自分の可能性を広げていくようすが生き生きとした口調(聞き書きのようです)で語られます。テツガクというと現実離れした営為のように思われがちですが、ごく人間的な苦しみや悩みから出発して思考を鍛え上げていく過程であり、哲学科を出ても日本全体でも就職口は限られていて、ヘーゲル「精神現象学」の最初の全訳者である金子武蔵が教え子を地方大学のポストにはめ込んでいくさまなどがさらっと描かれ、教授になるまで順番を待っていたら50歳になってしまうと計算するあたり、哲学者といってもカスミを食べているわけではないのがわかります。 その一方で、同時にその鍛え上げ方の学問としての厳しさと面白さもよくわかるのがこの本の優れたところです。
9 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
お元気でしたか先生−不良学生からの夏便り−,
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レビュー対象商品: 闇屋になりそこねた哲学者 (ちくま文庫) (文庫)
この本の著者は私にとっての学生時代の恩師の一人である。毎週水曜日の第5限、中央大学多摩キャンパスの文学部校舎(3号館)1階(確か3115教室だった)大教室で行われた『哲学概論』の担当教授が木田元氏だった。教職課程の取得要件に必要とされる科目に『哲学概論』若しくは『倫理学概論』の単位が必要だったことから気乗りはしなかったものの仕方なく、といったところが本音でこの講義を1年間に渡り聴いていた。講義は西洋哲学の流れに沿っての『認識が変化する過程の物語』とでも呼び得る内容だったように記憶している。だが豈にはからんや、アリストテレス・ソクラテス・デカルト・カント・マルクス・ニーチェそしてヤスパースとハイデガー・現象学の今、と西洋哲学史上にずらりと並ぶ先哲の足跡を辿る毎回の講義は当時、安部公房やF.カフカを読み耽っていた私にとって刺激的な内容だった。 『実存哲学』が得意とする“気分”の問題にスポットをあてる手法とその人間認識の在り方など、教授の講義内容はそれまでの『哲学』のイメージを払拭させるには十分すぎるほどだった。教授が時に折り独り言のように呟く“自らの読書遍歴”や“なぜ哲学を選んだのか、それも『存在と時間』にこだわり続けるのか”とのエピソード、時によっては一校時まるまる映画と音楽の話に終始するなど今になっても懐かしい思い出の一コマである。 さて本書はそうした“好奇心の塊のようなオジサンが振り返る自らの遍歴=何で哲学だったのか”の物語である。 生と死がギリギリの間で交錯する時代の中で出会ったドフトエフスキー、その作品を読み耽る中で巡り会ったキェルケゴールやハイデガー。存在としての人間を根源的に支えているモノは一体何なのか、との問い掛けに“今の自分が置かれた立場”が重なった、この一言は余りにも重い。 生活を支えるためだけならば、本当は実学の途から商売の世界に入った方が楽なことは百も承知だった、との言葉は胸に刺さる。なぜ大学に行くのか、そこで何を学ぶのか、といったことが最近になってようやく問われ始めているが、それはこの著者が日々向き合っていた現実に比べれば遙かに“軽い”レベルの問題であることに間違いはない。学問と平和、平和と学問、この両者の在り方を問い直す1冊だった。
2 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
男の色気に溢れた破天荒な人生,
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レビュー対象商品: 闇屋になりそこねた哲学者 (ちくま文庫) (文庫)
木田の本を最近手に取ることが多くなった。木田という方は80歳を超えていらっしゃるが、僕にとっては新進気鋭の思想家である。本書は哲学書ではない。木田という方の男の色気溢れた破天荒な人生の自伝である。 まず、色気について。本書には著者ご自身の写真が相当収録されている。これを見る限り、若いころの著者は実に美男子である。賭けても良いが、これは著者自身が意識して収録したに違いない。「美男子の哲学者」というイメージ戦略がそこに有るに違いないが、最早爽快感しか感じさせない。また、著者が「恋をしていたのかもしれない」という叔母の写真も1ページ丸々使って掲載しているが、これまた美女である。美男美女の写真溢れた自伝となっているが嫌みが無い。著者の会心の笑顔が透けて見えるではないか。 次に破天荒について。表題になっている闇屋の話も面白いが、やはり白眉は著者の語学勉強の凄まじさであろう。福翁自伝に出てきた大阪適塾での勉学風景を思わせるものがあるが、それがいかにも「破天荒」に見えてくる点が本書の醍醐味の一つだ。著者は喧嘩が得意だとも語るが、その語学の勉強の仕方も「喧嘩腰」である。 著者は最後に「やりたいことをして生きるのがいちばんよさそうだ」と断言している。驚くほど平凡な結論だ。但し、それを非凡な人生で貫いてきたことが見えるのも本書である。著者は色々なものに恵まれてきたことも確かだが、それ以上に破天荒に頑張ってきたことも確かだろう。それが、本書の爽快な読後感になっている。
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