二十年前の初出掲載作品から2007年掲載作品まで、新旧取り混ぜて、単行本未収録の作品を収めた一冊。異界の呼び声、その禍々しい雰囲気を肌で感じさせてくれる諸星ワールド。その読みごたえを堪能させてくれる作品がいくつかあったおかげで、本書の満足度はかなり高かったです。五つの収録作品は、以下のとおり。
◆「それは時には少女となりて」・・・・・・『月刊 アフタヌーン』2004年9月号、初出。大島君と渚(なぎさ)ちゃんが活躍する話。潮(しお)の匂いとともに、海の底に引きずり込まれる気もして、ぞっとしました。
◆「人魚の記憶」・・・・・・『SIREN2 MANIACS』2007年、初出。前の話と同じく、これも海の怪を描いた作品。サイレンの音というモチーフが、印象に残ります。
◆「描き損じのある妖怪絵巻」・・・・・・『妖怪変化 京極堂トリビュート』2007年、初出。妖怪ハンター・稗田礼二郎(ひえだ れいじろう)ものの一編。民俗学のフィールドワークを彷彿させる、ミステリ色の濃いホラー作品。面白かったです。
◆「闇の鶯(うぐいす)」・・・・・・『コミックバーガー』1989年第16号〜第20号、初出。PART1「鶯の里」と、PART2「山の神」の連作二篇。山奥の隠れ里を舞台にした作品。パソコンを操る少年キャラがインパクトあっただけに、彼の扱いがややもったいなかったかなと。見るなの座敷のエピソードとか、股木をこするシーンとか、その辺はぞくぞくしました。
◆「涸(か)れ川」・・・・・・『スピリッツ増刊2号 IKKI』2001年2月28日号、初出。いずことも知れぬ荒漠たる惑星の風景を思わせる、蜃気楼めいた世界を描いた短篇。終わらない夢を見ているみたいな、不思議な妙味を感じます。
いったん病みつきになると、あれもこれもと手を出して分け入ってみたくなる諸星ワールドの呪縛。最近読んだ、『栞(しおり)と紙魚子(しみこ)の百物語』『未来歳時記 バイオの黙示録』『闇の鶯』のなかでは、私は本単行本が、一番楽しめました。