ハインライン好きな女性作家のSF作品。個人的にはハインラインよりは、マキャフリーの歌う船シリーズ(本編ではなくシリーズのほう)にテイストが近いと感じる。マキャフリーの歌う船は悲恋が特徴ですからね。そういう背骨もありません。
キチンとSFをしている作品ではあるが、いかんせん主要テーマが「数奇なる運命によって人類圏最高の組み合わせとなる主人公カップル」という内容なので、SFという舞台を除けば昼ドラに近い。同じく女流作家であるビジョルドの作品の「死者の短剣シリーズ」は少しこういういっちゃった雰囲気を感じさせるが、アレに近い。勿論、ビジョルドの作品のほうが展開力は上だ。
舞台はSFだが、エルフとか、ノームとか、ファンタジー世界の種族をSFに置き換えた雰囲気なので理解するのは容易な安易な小説である。ある意味親切と言えるが、低俗でもある。
かなり初期から脳内お花畑の恋愛モードに突入し、その勢いで突っ走る。かなり女性視点で描かれているので、背景で動いている事象を知ることなく、彼女の目を通して語られる世界は、ちょっと力不足になる。徐々に明るみになる世界の秘密も、二人の宿命の深さを示唆しているようでげんなり。呼びかけも「お姫様」で、全編を通じてハードな困難を乗り越える愛というよりは、小手先ロマンティックな内容と感じた。ツンツンしているような主人公設定であるが実際はデレデレなのも、恋愛小説的に王道といえば王道なのだろう。
正直、今のハヤカワSFの中では不要な作品ではないかと思うし、金を払って読む価値があるかどうかは微妙。ライトノベルと比較すれば読める部類だと思うが、ハーレクインに片足を突っ込んでいる。男性読者諸氏にはおすすめは出来ない。