初出は1994年9月だが文庫化に合わせて大幅な加筆・修正が為されていることから2008年10月20日の文庫版リリースを初出とすべきと思える。筆者は公明党の第4代委員長であり、22年余の月日を野党として政治の現場に身を置いた人物でもあることから、ここに書かれた事実の価値は歴史的に見ても非常に高いものだとぼくは思う。
場面は田中角栄がロッキード事件を起こした時期に始まる。自民党の田中派が揺るぎ始め、ニュースで『結果』だけ知らされてきた政治が裏舞台ではこれほどの複雑なストーリーで動いていたのか、と感心した。『矢野メモ』は適切にその時の状況を再現してくれる。一番驚くのは、与党と野党がかくも有機的に結びついていたという点だった。時に野党の主張すら利用する金丸信の動きには驚いた。また、リクルート事件の名簿を開示した小沢一郎の度量にも驚いた。まさに今話題の小沢氏だが、ここまでの修羅場をくぐってきた人物に総理をやらせてみたい気がぼくはした。
そして最後は2008年5月12日におこされた訴状によって終わっている。この訴状に真摯に政治の世界を命がけで生きてきた筆者の無念を感じずにはいられない。